松阪市・東紀州地域の最後の砦として
松阪区域・東紀州区域を含む救急医療体制の現状
松阪区域および東紀州区域の医療提供体制は、現在深刻な課題に直面しています。特に東紀州区域では、高齢化の進行と人口減少に伴い、医療需要が増加する一方で、医療機関の人手不足や経営難が続いており、救急医療体制の維持が困難になっています。
このような状況下で、松阪中央総合病院が三重県内で5番目の救命救急センターとして指定されたことは、地域の救急医療体制の強化において重要な役割を果たしています。当院は、ドクターカーの運用や集中治療室(ICU)・救急病棟の整備、院内救命士の増員などを通じて、重症患者の受け入れ能力を向上させています。これにより、松阪・東紀州区域からの重篤患者の受け入れが可能となり、救命率の向上が期待されています。
さらに、当院は災害拠点病院としての役割も担い、南海トラフ地震などの大規模災害時にも対応できる体制を整えています。これにより、東紀州区域を含む広範囲の救急医療ニーズに応えることが可能となり、地域全体の医療提供体制の安定化に寄与しています。
沿革
・1997年4月:開設
・2012年2月:三重県災害拠点病院に指定
・2021年10月:救急センター開設
・2022年1月:救急病棟運用開始
・2022年8月:ドクターカー運用開始
・2024年10月:救命救急センター指定
救命救急センターの目標
- 高度救命救急医療の提供 365日24時間体制で重症救急患者を受け入れ、高度な救命救急医療を提供する。
- 地域医療の充実と連携強化 松阪・東紀州区域を中心に、関連機関と連携し、地域に応需する医療を実現する。
- 医療提供体制の強化 医療設備の充実と人員の確保・育成を行い、提供する救急医療の質を向上させる。
- 災害・多傷病者対応の強化 災害時や多数傷病者発生時に迅速かつ適切に対応できる体制を整備する。
救命救急センターの取り組み
- 24時間救急受け入れの確立 常時対応可能な診療体制の維持・強化。
- ドクターカーの運用 迅速な現場出動により、院外での高度な医療を提供し、救命率の向上を図る。
- 集中治療室(ICU)・救急病棟の整備 重症患者の早期回復を支える高度医療機器の導入と治療環境の向上。
- 人材の確保と育成 看護師・救急救命士・メディカルスタッフの専門職の確保と研修の充実。
- 地域連携と教育・啓発活動 地域の医療機関や救急隊との連携強化、および住民向けの救急対応教育の実施。
- 災害医療の強化 DMAT(災害派遣医療チーム)や病院BCPに基づく対応力の向上。
これらの目標と取り組みによって、松阪中央総合病院の救命救急センターは、地域の救急医療の要として機能し、患者の救命率向上と迅速な対応を目指します。
松阪中央総合病院 救命救急センター長 谷口健太郎 先生のご挨拶
当院は令和6年10月1日より、三重県内で5番目となる「救命救急センター」として正式に指定されました。医療計画において次のような機能を果たす機関として位置付けられたものを救命救急センターと言います。①緊急性・専門性の高い脳卒中、急性心筋梗塞等や、重症外傷等の複数の診療科領域にわたる症例や診断が難しい症例等、他の医療機関では治療の継続が困難かつ、幅広い疾患に対応して、高度な専門的医療を総合的に実施する。②その他の医療機関では対応できない重篤な患者への医療を担当し、地域の救急患者を最終的に受け入れる役割を果たす。③救急救命士等へのメディカルコントロールや、救急医療従事者への教育を行う拠点となる。
このような救命救急センターは、全国に309施設(令和7年1月1日現在)が指定されています。ドラマに出てくるような非常に大きな施設もありますが、当院には他院に誇れるスタッフ、チーム医療提供体制があります。様々な救急患者を受け入れるにあたり、救命救急センターのみで完結する患者は少なく、各専門科との連携が非常に大切になります。当院は救命救急センターと各専門科との垣根が低く、各専門科医師、さらには看護師と院内救命士、隣接するCT・レントゲン室で勤務する診療放射線技師、さらには薬剤師、臨床工学技士、様々なスタッフと救命救急センタースタッフにおけるチームによる医療提供体制が当院救命救急センターの大きな強みです。
また、三重県が被災県となる大規模災害時には当院が松阪区域および東紀州区域で活動する医療救護班の拠点となる事が計画されています。現在、能登半島地震での患者搬送フローをモデルとしたMCC(Medical check center)としての機能を果たすべく整備を進めているところです。
3次救急医療提供、災害対応における二つの大きな役割を果たすことで、地域および三重県に貢献する事が、わが救命救急センターの使命として日々成長を続けます。
救命救急センターの具体的な活動実績
・救急応需率について
・ドクターカー出動件数について
他の医療機関や行政との連携強化について
救命救急センターでは、松阪市および東紀州地域の消防・救急隊と定期的な連携会議を開催し、情報共有を行っています。また、市内総合病院やクリニックと密接に連携し、軽症患者の円滑な転院調整を行うことで、重症患者の受け入れ体制を維持しています。
救命救急センターとしての地域貢献(CSR)
救命救急センターの活動の一環として、地域住民向けの応急処置講習会を定期的に開催しています。特に、心肺蘇生(CPR)やAEDの使用方法について実技指導を行い、救急医療への理解促進と協力体制の強化を目指しています。
医療スタッフの研修・教育の充実
救命救急センターでは、医師・看護師・救急救命士・臨床工学技士を含むメディカルスタッフを対象としたシミュレーショントレーニングを定期的に実施し、チーム医療の強化を図っています。また、若手医師の育成にも力を入れており、救命救急専門医の資格取得を支援する研修プログラムを提供しています。
今後の展望と医療DXの融合
今後は、三重大学医学部附属病院 高度救命救急センターと連携し、遠隔診療を活用した救急診断支援システムの導入を計画しています。これにより、より迅速かつ正確な診断を可能にし、治療開始までの時間短縮を図ります。また、搬送中の患者のバイタルデータをリアルタイムで病院と共有できるシステムの構築も進めており、さらなる救命率の向上を目指してまいります。