ヘルニアセンターのご案内
当院では、『ロボット・腹腔鏡 低侵襲手術センター』の開設に伴い、鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡下手術を主軸としたヘルニアセンター開設いたしました。鼠径ヘルニアでお困りの患者様はお気軽にご相談ください。
鼠径ヘルニア(脱腸)とは
鼠径ヘルニアは一般的に「脱腸」と呼ばれ、足の付け根(鼠径部)から小腸などの臓器が飛び出してくる病気で、日本では年間に15万人の方が手術治療を受けている一般的な病気です。男女比は4〜6対1と男性に多く、当院のデータでも約86%の方が男性です。
男性は、母親のお腹の中で成長する際に、胎児のお腹の中でできた睾丸がお腹の壁を通り抜けて陰嚢内に収まります。その後、睾丸が通り抜けたトンネル(鼠径管)は筋肉の成長とともに閉鎖されます。しかし、加齢に伴い筋肉が弱くなると一度閉鎖したトンネルが再び開いてしまい鼠径ヘルニアを発症します。鼠径ヘルニアが圧倒的に男性に多いのはこのためです。
鼠径ヘルニアの症状
初期症状としては、鼠径部の違和感や痛みで、長時間の立ち仕事で悪化し、横になることで症状が改善することが特徴です。また、徐々に穴が大きくなると、飛び出す腸が増え鼠径部が膨らんできます。多くの場合、横になったり、膨らんだ鼠径部を手で押さえると腸はもとに戻りますが、腸の締め付けが強い場合には戻らなくなることがあります。これは、「嵌頓(かんとん)」と呼ばれており、強い痛みを伴います。嵌頓状態を長時間放置した場合は、腸閉塞や腸の壊死を起こし、命にかかわる緊急手術が必要になります。
鼠径ヘルニアの種類
鼠径ヘルニアは腸が飛び出す経路の違いから3つのタイプに分かれます。
- 外鼠径ヘルニア
睾丸が通り抜けたトンネルである鼠径管から腸が脱出するタイプで、男性に多くみられます。 - 内鼠径ヘルニア
鼠径管を通ることなく、筋肉(筋膜)が緩んだ場所から腸が脱出するタイプで、高齢者に多くみられます。 - 大腿(だいたい)ヘルニア
足に向かう血管が通る大腿管と呼ばれるトンネルから腸が脱出するタイプで、女性に多くみられ、嵌頓しやすいのが特徴です。
鼠径ヘルニアの治療
鼠径ヘルニアは自然に治ることはなく、手術が唯一の治療法です。嵌頓すると、重症の場合には命にかかわる緊急手術が必要となるため早めの手術をお勧めします。
手術方法はメッシュを用いて腸が飛び出す入り口をふさいで修復(補強)する方法が主体で、従来法である鼠径部切開法と当センターが主軸とする腹腔鏡下手術があります。
- 鼠径部切開法
鼠径部を5〜6cm程度切開して、メッシュを用いて修復します。麻酔方法は腰椎麻酔(下半身麻酔)で行います。 - 腹腔鏡下手術
腹腔鏡下ヘルニア修復術と呼ばれる手術方法です。お腹に5〜10mmの小さな穴を3ヶ所あけ、その1つからカメラである腹腔鏡を、残りの2つから手の代わりである鉗子を入れて、テレビモニターを見ながら手術を行います。
お腹の中から観察するためヘルニアの場所が正確に把握でき、メッシュによる確実な修復が可能です。このため、鼠径部切開法と比べ再発率が低いのが特徴です。麻酔方法は全身麻酔で行います
当センターでは、2014年8月より腹腔鏡下ヘルニア修復術を導入し、年間約50名の方に腹腔鏡下ヘルニア修復術を行なっておりますが再発を認めておりません。また、導入翌年の2015年以降は腹腔鏡下ヘルニア修復術の割合が約90〜95%を占めております。
腹腔鏡下ヘルニア修復術のメリット・デメリット
メリット
- 傷は3ヶ所になるが、それぞれの傷が小さいために痛みが少ない
- 鼠径ヘルニアの穴を正確に把握し、メッシュによる確実な修復ができる
- 両側であっても、同じ傷で同時に手術ができる
デメリット
- 全身麻酔が必要
- 全身麻酔での手術であるため、心臓や肺などに異常があると行えない
- 腹腔鏡手術であるため、お腹の中に強い癒着があると行えない
鼠径ヘルニア手術の合併症
- 水腫(血腫)
腸が飛び出していた袋の入り口をメッシュで塞ぐため、その袋の内に水(血)が溜まることがあります その場合は、腸が飛び出していたときと同様に体の表面からは膨らんでみえます 多くの場合は数ヶ月で自然に吸収されて治ります - 疼痛・違和感
傷の疼痛は個人差はあるものの数日で改善します メッシュによる疼痛や違和感を感じる方がいますが、多くの場合は短時間で改善します - 再発
鼠径部切開法と腹腔鏡下手術の全国平均で再発率は数%と言われています 当センターの腹腔鏡下手術では現在までに再発を認めておりません
ヘルニア外来の診療日および診療時間
診療日および診療時間
毎週火曜日と水曜日の9:00〜11:30
ご来院の際は受付にて「ヘルニア外来希望」とお伝えください
(専門外来以外でも通常の外科外来で受け付けております)
連絡先
電話:0594-72-2000 (代表)
担当医師:消化器外科 小森徹也